忘都日本 震災二週間目

翌日早朝四時半、弘知事達は垂直離発着可能な超音速旅客機(B999)で県庁上空に居た。
「いやはや、たった三時間でここに辿り着くとはね。ここに最高の技術の至れりってか。そう
 でしょう?大統領。」
「まあ、確かにそういうことでしょうね。この技術も出来てから十数年かかってようやくGの少なく、民間でも使える程度の騒音に抑えた超音速エンジンが出来たからねえ。元々私はその手のエンジニアから政治家になった身ですからね。」
 アサト大統領はしみじみとエンジン関係のエンジニアから転身し、政治家になった時期のことを思い出しながら搭乗中の飛行機のエンジンシステムの開発者について話した。
「臨時副知事の宮城翔兵君とは、五年前にこの飛行機のエンジンの基礎操作システムを制作と開発を当時大統領だったシンヤシキ君が政府として依頼して以来の主要な個人取引先ですね。まあ、当時中学生になったばかりの翔兵君には相当のプレッシャーになったでしょう。これについては、開発後一か月過ぎてから民間に公表している。しかし、まさか翔兵君から『開発者名に本名を使わずに偽名使用を条件に』と要請してくるとは思って無かったらしいが。」
そこにシンヤシキ副大統領が横槍を入れる形で説明を付け加えた。
「今、大統領が言ったエンジンシステムの要請については軍から一民間人に任せるのは機密漏洩につながると、反対答申がきたが当時から世界最高のセキュリュティーシステムを構築していた翔兵君の技能について軍の幹部にに見せたら黙認したんだよ。まあ実際にオンライン会議で軍幹部との顔合わせもしていますから大丈夫でしたけどね。その時の功績を称えて軍司令から外国人で初めて特尉に任じられることになりましたからね。その時は既に自衛隊のシステム部門の長(システム幕僚長【2066年新設】)に就任̪していたことに驚きましたけどね。両方とも最年少の入隊だ。」
十数分間上空に待機していたが臨時管制からヘリポート着陸許可が下りて、飛行機から降りた3人は屋上の入り口での手荷物検査および入国審査を受けて入庁した。
「お帰りなさい、比賀知事。そして、ご帰郷おめでとうございます。アサト大統領、シンヤシキ副大統領。お二人ともお久しぶりです。」
そう言って出迎えたのは、翔兵だった。
「確か、最後に会ったのは半年前の日米共同訓練の視察の時でしたか。」
「ええ、自分の隊もハッキングとサイバー攻撃対策の訓練も日米双方の上層部が視察されてましたからさすがに緊張しましたよ。まあ、超簡略化された防御システムがつかわなくてよかったですよ。大統領達には気づかれていたようですが。」
「たしかに、最終攻撃の処理速度に間に合わない思われましたが、君が最終手段をつかわず
して、逆に軍のサイバー攻撃部隊も木端微塵に無力化したのは一民間人では世界でただ一人、君だけなんだがね。おかげでこっちは再教育志願者でてんてこ舞いだよ」
そこで疑問に思った比賀知事が翔兵に聞いた。
「そういえば今現在、全国の官公庁で始動している新セキュリティシステムへの移行だが、そのシステム開発者の出生や名前が非公開になっていると話題になったが、まさかシステム開発者って君かね?」
その疑問に翔兵頷きながら答えた。
「ええ、そうですとも。知事を信頼して軍事機密を開示します。簡略化した説明になりますがいいですね。まあ家族は既に知っているのですが。」
「実際は、自衛隊(国土自衛軍)に入隊したのが小6の夏休み期間中、米軍の正式入隊は去年の1月下旬ですね。」「臨時知事、大統領一行をご案内致してまいりました。」
と説明している間に12階の一会議室についたので入室した。
「大原くん、40年ぶりだな。」
開口一番、アサト大統領はそういった。
「さてと、大原くんこの書類にサインしてほしいんだがいいかね?」
大原教授は、もう一つのサインを見て翔兵に言った。
「翔兵君、君がこの協定書の最高責任者だ。サインしてもらっていいかな。」
「ハア、それはいいでしょう。電子ハンコを押しますので大統領、タブレット端末を空中に置いてください。」
それを聞いた大統領が驚いた。
「まさか、あの机ができたのか?電源は大丈夫かね。」
「この空気机は災害用でも使えるように太陽光発電の一回の発電で五日程使える様にシステムを組んでいるので余程のことでは壊れないでしょう。それに機械自体には自己修復機能が付いているで水中でも使えますよ。既に特許は両国で取っていますので」
空気机の説明をしながら電子協定書にサインした翔兵は、画面の協定即時発行のボタンを押しタブレット端末を大統領に返した。
翌日から大統領達も同伴する形で県内各地の被災地の視察を13日目で終わり、第二号の支援協定(1兆ドル規模)を訪問最終日の14日目に協議・協定締結をした。






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