忘都日本 震災1ヶ月目前編

アサト大統領・シンヤシキ副大統領両名が米国に帰国して二週間と五日がたった9月4日、翔兵は県庁五階に設置された臨時風呂でニュースを見ていた。
 「(比賀知事は、軍事機密を知っていて翔兵く…いや、さんを臨時副知事に抜擢したんですかね?)」
「(いやいや、それはないでしょう。だって、特定機密・特務保護法によって守られているんですから。余程のことがない限り開示が認められないのだから。しかし例外的に本人が信頼できる者なら開示が認められるので今回はそれが適用されたのでしょう。)」
 司会のアナウンサーが法学者に質問し、法学者はそう答えた。
 将兵は、ため息をついた。
「はぁ、確かにその情報出したのはそうだけど、こんなすぐに広がるとはな。これについては、防衛相に直談判して1週間前に事実上の公表として世間に出しているし、最初期の報道こそ批判的な論調が多かったが、時間経過にしたがって賛成する論調が増えたのが不幸中の幸いか。」
「まあ、今日は1ヵ月ぶりに家に帰るんだしね。お母さんたち無事かな?」
愚痴っている翔兵に古市が言った。
「それについては、隣の風呂で梅子が異能(超音波と遺伝子を知覚的に見る)で捜索しているだろう。(この異能については特性は違うものの親族全員所持している)俺的には、二人とも無事じゃないかと考察している。まあ、多少のけがはあるだろうけどね。」
「今のところ俺の脳に送信される情報ではある程度場所は特定できているが身体的、精神的な面で父さんが重症だが、母さんの方は双方とも無事で元気に避難所生活をおくっているみたいだ。」
断定的に翔兵は、異能で送られてくる情報を口頭で古橋につたえた。 
「さてとそろそろ上がろうか。のぼせる前にな。」
「えっもうそんな時間⁉確かに。時間が経つのは早いねぇ」
話が終わると翔兵達は風呂から上がり、冷水にしたシャワーで火照った体を冷やした。
「あっ兄さん達先に上がっていたんだ。父さんの方は足の痛覚の遮断を私の遠隔精神手術式を使って(まあ、感覚を戻す際に激痛が走る可能性があるが)止めているから大丈夫。」
「じゃあここで自分の得意な遠隔物質転送術式をやるか。父さんの折れている方の足の骨模型直ぐ準備できるか?」
「ええ、できるわよ。CT写真の転送を兄さんの携帯にしておいたし大丈夫よ。」

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